18段 ローゼ・ベルント
ローゼ・ベルント
2008-07-02 Wed 23:54


燐光群+グッドフェローズ。
調布市仙川のせんがわ劇場にて。
ちょっとスペース・ゼロみたいな雰囲気の劇場。
椅子はちょっと豪勢なパイプ椅子にクッション、客席数は雛壇式に組んであるので120席ほどかな。
プラス前方に直座り用があるので全部で150くらいかも。
ここは実力のある劇団みたいで、いつきても満員。


ゲアハルト・ハウプトマン原作。
イプセンよりちょっとあとくらいのドイツの人、だそうで。
燐光群の坂手洋二さんが翻案、というか上演用に手直しというか。
原作とはたぶん変えてるところもいくつかあると思う。




食肉工場で働くローゼ・ベルントは、社長のクリストフ・フラムと不倫関係にある。
社長夫妻と親子のように育ってきたローゼ本人は、所長のことは好きだがこの関係をあまり望んでいない。
父親のベルントが薦める縁談で、身を固めたいと思っている。
相手は教会で働くアウグスト・カイル。
弟のマルテンも一緒に、小さな一軒家に引っ越す予定もある。
そのローゼにちょっかいをかけるシュトレックマン。
社長とのことを知っているシュトレックマンはローゼを半ば脅すようにして関係を持つ。
ローゼとアウグストが知事代理でもある社長のところに結婚の契約をしにきたとき、ローゼは自分が妊娠したことを知っていた。
ために結婚を躊躇い、社長夫人に訴えようとしつつも言い出せない。
夫人はローゼの妊娠を知り、「父親が誰であろうと、生まれてくる子は天使。大事にしなさい」と励ます。
シュトレックマンに脅され、激昂したローゼを不思議に思い、シュトレックマンを問い詰めるアウグスト。
喧嘩の中で、アウグストはシュトレックマンによって目と指を大怪我する。
そのことで裁判が起こる。
食肉工場の挽き肉に、表示偽装があったということで検査が入る。
工場は閉鎖され、ベルント一家は工場に隠れる。
半ば狂ったようになったローゼは、赤ん坊を産み落とし、それを挽き肉機に入れたと告白する。


なかなかに衝撃的な舞台でした。
ローゼ役の占部さんの第一声から引き込まれた。
彼女すごく上手い。
「恭しき娼婦」以来の上手い女優さんだと思う。
そこに自然に存在していられる役者ってすごいと思う。

舞台は独特の形をしていて、上手く言葉では言い表せないんだけど。
中央に五角形のポールが立っていて、東屋みたいになってるのが面白い。
最後にはそこの中央の床をはがして水があって。
ベルリンでたまにある形らしい。

ローゼが、いろんな男性の中で翻弄され、狂ってしまうほど苦しむ姿がつらい。
でも最後にアウグストが抱きしめて「君がどんなになっても側にいるよ」と叫ぶのが…。
真面目で冴えない男だけど、健実で誠実だから、彼と一緒に立て直して欲しいと思う。
それは安易な終わり方なのかな。

個人的に時事ネタが多めで楽しい。
食肉の偽装とか。
派遣労働者が多いとか。
「現代の蟹工船労働者諸君!」みたいのもかなり意識してるんだろうな。
まぁ、社会派時事ネタが多いのは燐光群の特徴の一つだろうけど。


終演後、坂手さんと、劇作家の永井愛さんとのアフタートーク。
すごいよ!
ゲストにこんな大物呼んじゃうなんて!

主に永井さんからの、内容に対する質問。
「ローゼの犯した罪(法的に)は何?」と問いに。
最初はシュトレックマンの、アウグストに対する傷害罪の証人として裁判所に呼ばれていて。
その罪状に対し、シュトレックマンがローゼとの関係を暴露して言い訳して。
そのことに父親のベルントが娘に対する侮辱罪で新しい裁判を起こして。
そっちのほうで社長も呼ばれて本当のことを話して。
当時は教会の権威が高かったから、男たちは宣誓した限り本当のことを話してしまう、と。
だけどローゼは男たちとの関係を否定して、それが裁判所に対する偽証罪になる。
それで出頭を促された。
ということらしい。
それで「私恥ずかしかったの!」の何回にもわたる絶叫に繋がるんだな、と納得。

それから、子殺しに関して、この作品があんまり上演されないのは、妊娠して出産までしてるのに周りの人が誰も気づいてないのが現実的じゃない、と批判されることが多いから、ということなんだけど。
今回は、ローゼの妊娠は本当なのか彼女の幻想なのかわからないようにしている、とのこと。
あと、妊娠のことを、途中で話してあとは出てこない、とも批判されているけど。
やってみると「このセリフはそれを意識してるんだ」と分かってくる、とのこと。
見てても、ローゼの妊娠を前提にして、ローゼや社長夫人の言葉がある気がしたな。
子どもを挽き肉機に入れた、というのはちょっとショッキング。
原作はのどかな農村地帯で、社長は地主。
ローゼは産んだ子を木の陰に放置した、とのこと。

最後に永井さんも理事をしている新国立劇場の芸術監督選定に関して。
去年栗山さんから鵜山さんになったんだけど。
それが今年、宮田慶子さんに代わって。
その選出がおかしいんじゃないか、と。
鵜山さんも宮田さんもそうとうの技量がある人、だと思うけど。
(鵜山さんの芝居は見たことないけど)
永井さん曰く、選出委員会は、理事長と事務局から「鵜山さんに続投の意思はない」と聞かされていて、先入観があった、と。
それでも鵜山さんの続投を望む声は多かったけど。
結局理事長の意思が通った形になっていて、それは演劇人の声を反映してないんじゃないか、と。
新国立劇場は、オペラやバレエもやってて、そこは専門でやってる人がいるけど。
演劇はそれこそ多彩な人たちがいて、いろんなことをやってる。
だから芸術監督に大きな裁量が委ねられていたほうがいろんな冒険ができたりして面白いのに、理事長の部下みたいにされようとしているのはいかがなものだろう。
ということらしい。
確かに。
国立とはいえ、文化的な中心を担おうとするなら、自主性は保障されてるべきだと思う。
それなのにその任命権を振りかざすようなことをすると、自然文化活動が萎縮しちゃうと思う。
それはあまりにも悲しいことだと思う。


と、本文とは何にも関係なさそうなところに深く感動してました(笑)


ホント、今日はすごく贅沢な時間を過ごさせてもらったw

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