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【フランケンシュタイン】赤子と執事

フランケンシュタインの坊っちゃんとお嬢様と執事さん。


 ルンゲが初めてフランケンシュタイン城を訪れたのは、18歳の時だった。
 主人であるステファンが、弟のバロンの城で開かれる宴会のために手伝いの人員を割くようにと執事に命じたため、数人の同僚とともに派遣された。
 なんでも、軍医として戦場へ行っていたバロンが退役し、久しぶりに城に帰ってくるのだという。
 ステファンの城とは違い、フランケンシュタイン城にはごく少数の使用人しかいないのだと、ルンゲの先輩が道々語って聞かせた。
 奉公に上がって3年が経っていたルンゲは、あれこれと質問し、バロンには妻と娘、そして生まれたばかりの息子がいること、戦争に行く前は町の人々の病気を診ていたのでまた医業を再開するかもしれない、ということを知った。
 その一方で、夜な夜な怪しげな研究をしていたともいい、街の人々は感謝とともに薄気味悪さも感じているようだった。
 訪れたフランケンシュタイン城は、尖塔を持った小ぢんまりとした城だった。
 鬱蒼とした森の中にあるせいか、ほんの30分も歩けば町があるというのに、どこか人里離れた印象を与えた。
 城に入り、庭に椅子やテーブルを出すよう命じられた。
 3度目の往復を終えて次の仕事を、と執事長のいる部屋を目指しているとき、向こうから幼い少女が不安げにきょろきょろしながら駆けてくるのを見つけた。

「…どうかなさいましたか、お嬢様?」

 きっと、バロンの娘だろうと見当をつけ、呼びかける。
 声をかけられて初めてルンゲに気づいたらしい少女は一度びくりとしてから、目に大きな涙を浮かべた。

「ステファン様のところからきました、ルンゲと申します。どうされたんですか?」
「…乳母やがいないの」

 少女が小さな声を震わせた。

「……弟が、泣いているの」
「坊ちゃんが? それは大変だ。私でよければお手伝いしましょう」
「こっちよ、きて」

 スミレ色のドレスを着た少女が、ルンゲの手を引いた。
 少し言った先の扉を開けると、とたんにけたたましい泣き声が響く。
 思わず耳をふさいでしまいそうになるのをかろうじてこらえる。

「ああ、どうしたんですか、坊ちゃん」

 ゆりかごの中を覗き込めば、柔らかそうな布に包まれた赤ん坊が泣き叫んでいた。
 それこそ、火のついたように泣きわめいている。

「お腹が空いたんですか、それとも…」

 抱き上げると、微かに異臭がした。

「ああ、おむつですね」

 片腕に抱いてあやしながら、部屋を見回す。
 すぐ近くに綺麗なおむつを見つけ、部屋の隅にある盥に水差しから水を張った。

「坊ちゃん、もう少しお待ちくださいね」

 一度赤ん坊をゆりかごに戻し、横で不安そうに見ている少女にもにこりと微笑んだ。

「大丈夫ですよ、お嬢様。坊ちゃんはすぐに泣きやんでくれますから」
「ほんとう?」
「ええもちろんです」

 タオルを水に濡らし、赤ん坊をもう一度抱き上げる。
 テーブルの上におむつを広げ、その横に赤ん坊を寝かせる。
 赤ん坊のおむつを外すと、むわりと異臭が広がった。
 ミルクしか飲んでいないのだろう、臭いはきつくない。

「すぐにさっぱりしますからね、坊ちゃん」

 話しかけながら、汚れを拭き取る。
 ときおりじたばたと手足をばたつかせるのを、なだめながらなので作業は手間取る。
 綺麗になったのを確認し、新しいおむつをつけてやる。

「うう…?」

 赤ん坊が涙に濡れた目でルンゲを見上げた。
 綺麗な瞳が不思議そうに見ているのへ、にこりと微笑みかけた。

「ほら、もうすっきりしたでしょう?」

 抱き上げて目の高さよりも高く掲げてやると、少しだけきょとんとした後、きゃっきゃと笑った。

「ああよかった、機嫌を直してくれましたね、坊ちゃん」

 腕に抱き直し、見上げている少女にも目を向ける。

「お知らせしてくれてありがとうございました、お嬢様」
「あたし、エレンよ。弟はヴィクター」
「これは失礼しました、エレンお嬢様。ヴィクター坊ちゃんはもうご機嫌になったようですので、私は乳母やさんを探してきましょう」
「もう行っちゃうの?」

 ルンゲが赤ん坊をゆりかごに戻すと、少女が残念そうな声を出した。
 今日の宴会の準備で、大人は皆忙しいのだろう。
 年端も行かない赤ん坊の弟と二人、この部屋に残されて寂しい思いをしているのかもしれない。

「申し訳ありません、エレンお嬢様。私も仕事がありますので…」

 うなだれた少女の目にまた涙が盛り上がる。
 慌ててルンゲは彼女の前に膝をついた。

「あとで、時間がありましたらまたこちらへ参ります。それまで待っていただけますか?」
「ほんとうに?」
「ええ、お約束します」

 少女の手を取って、ぽんぽんと何度かたたいてやった。

「わかったわ」

 幼い見た目よりも、ずっとしっかりしているのだろう、少女はルンゲを見据えて頷いた。
 もう一度少女に微笑みかけ、立ち上がってゆりかごを覗いた。

「ヴィクター坊ちゃんも、またあとで参ります」

 ルンゲを見上げた赤ん坊が、差し出したルンゲの指を掴んだ。

「坊ちゃん、離してくださらないと」

 きゅ、と握られて苦笑しながら何度か手を揺する。
 それでも赤ん坊は手を離してくれない。

「ヴィクターもあなたにいてほしいのよ」
「お嬢様…」

 くいくい、と少女がルンゲの服を引っ張る。

「……あと少しだけですよ?」
「嬉しいわ、ルンゲ!」

 ぎゅ、と少女がルンゲの足にしがみつき、赤ん坊がきゃっきゃと笑い声をたてた。
 困ったように笑ってから、ルンゲは指を離してくれない赤ん坊をもう一度抱き上げた。




っていう過去があったらいいな、って。
開幕前からこれ考えてたんですが、ルンゲさんが「坊ちゃんのおむつを替えた」発言されたので、もうこれは書くしかないなと。
ちなみにこの時点のルンゲさんはまだまだかなり下っ端の方だと思う。
あと、書いてないけど弟や妹がいるから赤ん坊の世話にも慣れてるんだと思ってる。
それから、冒頭の説明は適当に読み流してください。設定かなり曖昧。
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